musashiman’s book review

一般の話題本や漫画を紹介しています。

Book.大人もAIに仕事を奪われない。読解力アップの実践法「AIに負けない子どもを育てる」

f:id:musashimankun:20200411181735j:plain

新井紀子著、東洋経済新報社

Over View
 現在はさまざまな分野でAI(人口知能)を活用したコンピューターやロボットが活用され、今後は我々の社会で「AIに仕事を奪われる」分野や人材が出ることが懸念されています。人間はAIに負けてしまうのか、負けないように子供の頃から訓練する方法を紹介したのが本著「AIに負けない子どもを育てる」(新井紀子著、東洋経済新報社)です。
 著者の新井紀子先生は、AIは将来的には人間の十分なコミュニケーション能力を要する分野、実際に肉体を活用しなければいけない分野、そして「読解力」を必要とする分野では十分な力を発揮できないと予測しています。つまりAIに勝つためには「読解力」を強化する必要があるというのです。
 
 しかし、読解力のない人たちが増えているのが現在でもあります。この状況を書いたのが前著「AI.vs教科書が読めない子どもたち」(同)で、山本七平賞日本エッセイスト・クラブ賞に続き、2019年ビジネス書大賞などを受賞しました。新井先生は一ツ橋大学法学部およびイリノイ大学数学科を卒業後(専門は数理論理学)、11年からは人口知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」ディレクター、16年から読解力を診断する「RTSリーディングスキルテスト)」の研究開発を主導しています。

 
 AIを信じなければ、このテクノロジーを前提にして再編される2030年代を生き残ることはできない。しかし、AI万能という情報を鵜呑みにすれば、5000円の羽根布団を50万円で買うことにもなりかねない。ですからAIを過小評価せずに、過大評価もしないことが大切だと説いています。特にモノ作りで生きる日本国民には、GAFAの宣伝に踊らされることなく、正しいAIリテラシーを身につけてほしいと主張しています。
 そのための対策として、AIの性能を測るための問題集が必要だと感じた新井先生が実施しているのが、日本独特のRST(リーディングスキルテスト)です。本書では実際のRSTも紹介しながら、読者が実際に体験できるようになっています。
 AI時代を生き抜くために重要になる「読解力」を身につけられる方法や、実際の授業の状況やテスト結果を分析し出た傾向をもとに、学生たちに必要な授業が提案されています。

 

実践スキルテスト添付

 RSTは「係受け解析」「照応解決」「同義文判定」「推論」「イメージ固定」「具体例固定」の項目で構成されています。例えば、「係受け解析」では、【水にしずむ鉄でできたボルトとナットも、鉄より密度の大きい水銀は水に浮かぶ。この文脈において、以下の文中の空欄にあてはまる最も適当なものを選択肢のうちから一つ選びなさい】を例題に、問題として【ボルトは(  )に浮かぶ】の( )内候補に①水銀②鉄③水④氷を挙げています。
 このテストを受けたタイプとしては、11万人の受験者データを分析し、28項目中で「係受け解析」「照応解決」「同義文判定」で6点以上、「推論」「イメージ固定」「具体例固定」で3点以下の層が最も多いという結果がでました。
 
 タイプとしては、活字を読むことは嫌いではなく、知的好奇心はあるのに理数系やコンピューターに苦手意識がある。ネット情報に頼りがちであることから「情報過多で論理力不足」だと分析しています。また、読解力を培う授業では、小学校4年生向けに、単元名「正しく伝えよう」、目標は「無駄なく正確に文章で伝える」力を培う国語の授業を提案しています。同授業では、オセロの玉を並べた状態と、その説明文章を正確に結びつける「イメージ固定」の力をつけることを第一の目標としています。本書では具体的な授業内容が紹介されています。巻末には小学校高学年までに子供が取得すべきことを箇条書きにまとめています。
 

Commentブログ筆者

スキルアップテストで大人も読解力がアップする
 AI時代をどう生きていくか。今後はAI導入で失われる職業が増えることが予測されています。わかりやすくいえば、コンピューターの自動化で人が必要なくなるということです。「AIに負けない子どもを育てる」は、そのような社会で生き抜くためには、AIが進出できない分野で仕事をするか、AIに負けない力をつけるためのトレーニング方法を提案しています。
 ではAIの躍進で社会がどう変化するのか。仕事ではどんな分野がAIを導入したコンピューターやロボットなどに変化してしまうのでしょうか。例えば最近では、我々の生活に密着した分野では小売店のレジ係や、飲食店のカウンター接客係などが挙げられます。実際に小売店のレジ係では自動支払い機器を導入した店舗が増えていたり、無人店舗が出店されています。電話代行サービスなども、コンピューターが受け応えする企業が増えています。原子炉など人間が入ることのできない危険地帯でロボットが活躍していることはご存じの方も多いと思いますが、廃棄関連ではごみ処理などもロボット化学によるオートメーション化が増々、進むと予測されています。
 
 このような状況で生きていくための提案事項として新井紀子先生は、AIが苦手とする「読解力」にスポットをあて、子供から大人まで強化する方法をRST(リーディングスキルテスト)を基本に紹介し提案しています。
 本書でも実際にテストもいくつか出題されていますので、自分がどんなレベルにあるのかをテストしてみることもできます。大人でも読解力が上がる例として、実際にテスト受講者が能力アップにつながった事例も書かれていますが、本書を通して今、一度、自分の脳力をチェックしてみてはいかがでしょうか。
 前著の「AI.vs教科書が読めない子どもたち」は多くの賞を受賞するなど話題にもなりヒットしました。これらの印税を教育機関の充実や災害に備えたツールに活用することも明記しています。

関連本

Book. UFO体験を考える「哲平くんと宇宙人」「UFOエネルギーとNEOチルドレンと高次元存在が教える 地球では誰も知らないこと」

f:id:musashimankun:20200411182342j:plain

「UFOエネルギーとNEOチルドレンと高次元存在が教える地球では誰も知らないこと」
(保江邦夫、松永久著 明窓出版)

Over view
宇宙人について書かれた本は今までに多く出版されていますが、今年では絵本「哲平くんと宇宙人」(いけかつまいこ著 星雲社)や「UFOエネルギーとNEOチルドレンと高次元存在が教える 地球では誰も知らないこと」(保江邦夫、松久正著 明窓出版)などが挙げられます。
「哲平くんと宇宙人」は、勉強や運動があまり好きでない、ひきこもりがちな少年が宇宙人と出会い旅する物語です。少年は現実の生活から逃げたくなり、神様にどこか遠くに連れて行ってほしいとお願いします。ある日、少年は宇宙人に出会い宇宙船で宇宙に旅します。そこで楽しいことを経験しますが、やがて地球に戻りたくなり、再び、地球に戻れるようにお願いするのです。なぜか、地球に戻った少年は今までのひきこもりがちな少年ではなく、学校でも皆と楽しめる小学生に変わっていました。著者のいけかつまいこさんは、元はミュージシャンで森山直太郎さんのバックミュージシャンもつとめたことがあるそうです。

「UFOエネルギーとNEOチルドレンと高次元存在が教える 地球では誰も知らないこと」は、ノートルダム清心女子大学教授の保江邦夫先生と、「むげんだい医師」で鎌倉ドクタードルフィン診療所院長の松久正先生の対談本です。
 タイトル通りにUFOや高次元存在のエネルギーについて、ご両人の経験談や出会った人々との話を公表しています。保江先生はフランスのルルドに行ってマリア様からの高次元の「愛」のエネルギーが働いて、奇跡的にがんが消えたことなどを話しています。また、松久先生は、最近の子供たちに元気がないのは、地球や親の持つ複雑なエネルギーで、子供たちの本来にもっている高い価値のあるエネルギーが失われていることを嘆いています。大人は早くそこに気づいてほしいと述べています。対談形式で構成されていますので読みやすい内容となっています。

がんが突然に消えた

保江先生の有名な話は冒頭でも書いた、フランスのルルドの水でがんが消えたことです。以降、先生は高次元からさまざなメッセージを受けたり、高次元の存在と遭遇したりしています。

UFOについては、先生の住んでいるマンションの駐車場が地球の気脈の結節点「龍穴」になっていて、すごい波動を発している所があるらしいのです。保江先生はそこにUFOが現れる可能性があると考えていたらしいのですが、1年間は全く現れませんでした。それが、先日ついに現れました(対談当時)。映画「未知との遭遇」の最初のシーンに登場する、赤、青、緑の光を放つ小型UFOだったということです。

また、こんなエピソードも披露しています。四国のある県立高校の先生から「いじめ防止対策講演会」に講演依頼があり出かけたところ、そこの校長先生がUFOをよく見かけるという話を突然にしたり、保江先生に講演の依頼をした人が、UFOに乗ったことがあると言い出したのです。
その人はまず、宇宙人らしい人物が目の前に現れてコンタクトをとるようになったらしいですが、学校の先生ですから二人とも保江先生と出会うまでは、お互いに全くUFOの話はしたことがなかった。つまり、保江先生がきっかけで、お互いがUFOについての経験談を披露したらしいです。
一方、松久先生は脳の松果体には宇宙の叡智が入ってくることから、ここをいかに活性化するかが、人生を楽しく生きれらるかの鍵になると述べています。

Commentブログ筆者

UFO体験で明らかになること

ブログ筆者がUFOに関心を持ったのは小学生の頃でした。当時、テレビで特集番組を見たのがきっかけでした。当時はよく、近くの山の秘密の場所へ出かけてはUFO探しをしました。

以降、成長するにしたがい、仲間同士でたまにUFOや宇宙人について話すことはありましたが、大人になるにつれ徐々に減っていきました。ただ、映画「未知との遭遇」や「E.T」の記憶は、いつまでも消えることはありませんでした。

自分が自分から抜け出したのは、中学3年の夏、学校から帰宅途中に自転車から転倒した時でした。一回転して地面に落ちる途中で空を飛んだのです。

そして、何か自分を超えた存在がいることに気づいたのは25歳の頃だったと思います。ハードワークによる疲労が原因で高熱が続き、1週間ほど入院した時に「存在」が現れました。その点は保江先生ががん治療のために、フランスのルルドに出かけ祈念した時と心情的には似ているかも知れません(命がけの祈念という点で)。

ブログ冒頭では今年に出版された2冊で面白かったものを紹介させていただきましたが、以前に出版されたUFOについての本では、「Lシフト スペース・ピープルの全真相」(秋山真人、布施泰和著 ナチュラルスピリット)「ETコンタクト~宇宙人UFOとの遭遇は始まっている」(坂本政道著、ハート出版)が挙げられます。

執筆者の秋山さんは超能力者、布施さんは元ジャーナリスト(共同通信記者)、坂本さんは元ソニーの社員と職業もさまざまですが、それぞれのUFO体験もとても興味深く読むことができます。ボリュームの都合上、この2冊についてご紹介できないのは残念ですが、UFOに関心のある方はご存じの方も多いと思います。それくらいに超能力やUFOの世界では著名な方々で、内容も充実しています。

現在はUFOや宇宙人について信じるか、信じないかと言っている時代ではないことは多くの人が認めるところだと、個人的には思います。自分がなぜ、ここにいて、本当はどんな存在なのかを知る上でも、UFOや宇宙人について考えることは大切なことです。(もちろん、悪い存在がいることも忘れてはいけません)

関連本

Book.世界的投資家が予測する未来「日本への警告~米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く~」

f:id:musashimankun:20200411182818j:plain

「日本への警告」(ジム・ロジャーズ著 講談社

Over view
 かつて世界を驚かすほどの驚異的な経済成長を遂げてきた日本は現在、衰退の一途を辿っている・・・・少子化財政赤字問題をこのまま放置しておけば、行き着く先は破滅にほかならないと著者で世界的投資家のジム・ロジャーズさんは「日本への警告~米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く~」(小里博栄《取材、翻訳、監修》、花輪陽子《監修》 講談社)の中で指摘しています。
 
 ロジャーズさんは大学を卒業後にウォール街で働き、やがて投資家のジョージ・ソロスさんとクォンタム・ファンドを設立し、10年で4200%という驚異的なリターンを出した人物です。同著では現在の日本を取り巻く世界情勢や、日本の問題点と解決策を提言しています。まず、少子高齢化や多額の財政赤字に伴う長期債務残高について、日本人は問題を認識しながらも、問題に対して本気で解決してこなかった。それは「日本は大丈夫」だという根拠のない思い込みをしているからではないかといいます。

 

しかし、公的年金問題がクローズアップされる中で、今は「日本は絶対に大丈夫」だとは信じていない人が増えている。ただ、その破滅的な未来をどう回避すればいいのか分からないのだと断言します。問題の根本には安倍首相の無政策があり、アベノミクスの第一の矢である金融緩和は、日本株価を押し上げ企業が息を吹き返したように語られていますが、通貨切り下げが中長期的に国の経済を成長させたことは一度としてないということです。
 2020年に開催される東京オリンピックパラリンピックに関しても、道路改善やスタジアムの建設事業にかかわる人々や政治家は恩恵を得られるかもしれませんが、オリンピックが国全体を救えたことはありません。むしろ、さらに日本の借金は増えると指摘しています。
 このままでは30年後に日本ではより犯罪が増え、50年後には日本政府に対する反乱が発生すると予測する著者が、現在、日本が克服すべく課題、解決策を挙げています。

 

少子化問題の解決が先決

ロジャーズさんは日本では「人口減少」問題を挙げています。とにかく日本政府は、少子化対策について効果があることは何でもやることが先決で、子育てにはインセンティブを与え、女性が仕事と両立できる環境を整えるべきだといいます。
 アメリカやシンガポールでは、女性が産後3か月程度で復職するのが一般的で、日本では1年以上の長期にわたる産休が認めらます。日本の方が恵まれていると思われがちですが、逆で日本では保育園やシッターサービスが不足していることが原因でもあるのです。
 この状況から長期にわたって日本の女性は育児とキャリアの二者選択を迫られ続け、企業にとっては労働力不足につながってしまいます。そのような意味でも日本政府は女性をサポートするサービスを、予算の第一優先にあげて問題解決に取り組むべきだと提言しています。
 
 また、日本企業については、高品質商品の生産を強化することが重要だと掲げています。自動車やテレビゲームなどを見てもわかりますが、日本のクオリティに対する情熱は間違いなく世界一で、2番めの国が思いつかないほどに群を抜いています。日本ほどクオリティに対して「抑えがたい欲望」をもっている国は他には思いつかないというのです。
 他国の文化やビジネスを取り入れて、さらにレベルを上げることに長けていることも注目されます。インドや中国、マレーシアの工場で製造されている無印良品やウォシュレットなどの例にもある通り、「メイド・イン・ジャパン」をもっと世界に広めることを提案しています。
 

Commentブログ筆者

日本の問題点を冷静に分析し提言
 最近の日本を取り巻く世界情勢では、香港の学生たちの政府に対するデモ、イギリスのEU離脱問題、続発する北朝鮮のミサイル発射、緊張の続く日韓関係、そして日本国内では年金問題から増加する幼児虐待まで問題は山積しています。少し考えてみても世界情勢や日本が、依然として激動の時期を迎えていることは誰もが知るところです。
 
 いつのころからか日本はグローバリズムに乗り遅れ、少子高齢化が進み、二極化で貧困層が増えていることは理解できますが、なぜ打開策が見えてこないのかが、分からない人も多いのではないでしょうか。
 この点で世界的投資家のロジャーズさんは、投資家の立場から日本を冷静に分析し、問題点を指摘し改善策を直言しています。後は日本政府がどう変化するかですが、何よりも一番に変化すべき分野が旧態依然としていては、抜本的な問題解決には至らない。状況は悪化するばかりといったところではないでしょうか。そのような意味でも、「日本への警告」では現在の日本がどのような位置にあるのかがよく理解できます。
 
中国の驚異的な成長と朝鮮統一
 世界情勢については中国がアメリカの8倍エンジニア数を輩出していることなども書いていますが、同国の驚異的な成長には目を見張るものがあります。ブログ筆者には海外生活が長い身近な人物がいます。彼が10年程前に、当時、「これからは中国語を話せることが大切だ」と言っていましたが、ロジャーズさんも同じことを考えていることを個人的に注目しました。
 ブログ筆者に身近な人物は社会に出てからのほとんどを海外で生活していますが、海外で仕事や生活することもロジャーズさんが、重要ポイントに掲げていることの一つです。成功し続ける人たちには、いくつか共通項があるようです。

関連本

<

!-- /wp:paragraph -->

Book(Manga).「事故で失明し絶望した男がブラインドマラソンで再起『ましろ日(7巻 最終巻)』」

f:id:musashimankun:20200411183144j:plain

Over view
 漫画「ましろ日」(原作・香川まさひと、原画・若狭星、小学館)は、仕事中にトラックにはねられ失明した自転車で運搬業をしていた山崎恭二と、広島で生きる仲間たちの生活を描いています。事故で両目を失明してしまった山崎は、保険金3000万円を受け取りますが、仕事、自信など全てを失ってしまいます。
 
 そんな山崎のもとに安芸信用金庫の加瀬ひかりが現れ、世話をするようになります。やがて、自分の部屋にいることさえ恐怖を感じていた山崎は、絶望感の中でひかりが訪ねてくることに、少しずつ生きがいのようなものを感じていきます。ひかりも小学生の頃に交通事故で両親を失っていました。
 

山崎はある日、視覚障碍者として走ることに目覚め、10キロの伴走にひかりを選びます。徐々に走ることに力を発揮してきた山崎はチームを組み本格的にマラソンに取り組み始めます。やがて、山崎にパラリンピック挑戦の話が舞い込みます。「ましろ日(7巻)」では、山崎を強化選手にすべく、世界一の伴走者を自負する中居が東京から、広島に住む山崎を訪ねます。
 不幸な事故で失明した山崎は一時期、人生に絶望しますが、走ることやブラインドマラソンを通じて希望を持つようになり、やがて希望は多くの仲間たちに広がっていきます。
 原爆が落とされた広島を背景に、そこに住む人たちの生活を通して、生きることについて考えさせられるヒューマンドラマです。

ランナーと伴走の信頼

「7巻(最終巻)」では、伴走者の中居が山崎と「防府ラソン」に出場します。上杉などのライバルをどうかわせるか。レースにはブラインドマラソン協会強化委員会の桜坂里子も応援と偵察に駆けつけます。しかし、強化委員会員たちの思惑とは裏腹に、山崎の心中は穏やかではありません。このレースでも山崎は伴走者と言い争いを始めます。もちろん、ランナーと伴走者の信頼関係がなければ、レースはスムーズには進みません。
 
 言い争いは初めてではありませんでした。以前のレースでは、伴走者に山崎を失明させた、トラック運転手の但馬がつきました。レース途中で山崎は、伴走者が自分をはねた運転手だということに気づき怒りをあらわにします。レースは途中で終わるものと思われましたが、必死で「ごめんなさい」と謝る但馬を山崎は許し「一緒に走ってほしい」と、今度は伴走を頼むのです(第6巻)。
 
 今回のレース「防府ラソン大会」では伴走者の中居が山崎をリードし、あくまで山崎に冷静にレースを走らせようと、ライバルの状況を説明しません。それが山崎を困惑させてしまうのです。「レースを楽しめない」山崎は、このまま中居と走り続けることに疑問を感じるようになります。
 

Commentブログ筆者

 人間の勇気と無限の可能性
 突然の事故や病気が原因で健康だった身体の機能がマヒして、それまで普通に生活できていた日常が真っ暗に変わってしまう・・・・・大変なことです。奇跡的に助かっても半身不随や、歩行困難など大きな身体機能の損失につながれば仕事はてきなくなり、その人の人生は終わったとしか言えなくなってしまいかねません。それ程に交通事故は危険なものです。
 
 最近はパラリンピックなども注目されるようになり、歩行という身体機能を失っても、車椅子生活になった人がバスケットで再起したり、手や足が不自由でも水泳で再起したり、片足がなくても幅跳びの選手として頑張ったりする人が増えています。本当にそのような選手たちを見ると、人間の勇気や可能性について考えさせられてしまいます。
 
どんなことがあっても幸せになる覚悟
ましろ日」は事故で突然に失明した主人公の山崎が絶望しながらも、ある日、走ることに目覚め、ブラインドマラソンに参加することで自分に自信を取り戻し、再度、人生に挑む物語です。

現在、全国に視覚障害者ランナーは1000人いるといわれます。目の不自由なランナーが、伴走者に叱咤激励され強くなったり、伴走者がランナーに勇気づけられるケースは実際にもあるようですが、どちらも精神的、肉体的な強さがなければできないことです。そんな人たちを見ていると、ただ勇気づけられます。

また、「ましろ日」は広島を舞台にそこに生きる人々との交流を通して描かれているのも、大事なテーマの一つになっています。この地で原爆が落とされたという悲惨な出来事は、忘れることはできません。
 そして山崎にとっても、多くの仲間たちにとっても大事な恩師だったまさみ先生の言葉が胸に刻まれているのです。

「広島に住むには覚悟がいる。幸せになる覚悟よ・・それは、誰かのために生きることなんよ、幸せは一人でなるものじゃあないけぇ」のまさみ先生の言葉が示す通り、全編を通して各シーンの背景に原爆ドームが描かれている中で、広島が原爆落下の日からどう復興したのか、今まで人々がどんな気持ちで生活してきたのか、人にとって大切なものは何かを考えさせられる内容になっています。

関連本

Book.日本企業の最新戦略に学ぶ「なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか~アマゾンに勝つ!日本企業のすごいマーケティング」

f:id:musashimankun:20200411183958j:plain

「なぜ女はメリカリに、男はヤフオクに惹かれるのか?」
(田中道昭、牛窪恵著 光文社)

Over view
 2018年4月のフリマアプリ市場は4835億円(経済産業省調べ)となり、ここ数年で急速に市場が拡大。その中で注目される企業が「メリカリ」と「Yahoo!オークション」(ヤフージャパン)で通称「ヤフオク!」(以下「ヤフオク」)です。ちなみにフリマとは不用品を売買するフリーマーケットを指します。
 2018 年6月に東証マザースに上場した「メリカリ」の国内ダウンロード数は7100 万件を突破(同7月)しました。18年度6月期連結決算の売上高は334億円で、15 年度売上高42億円の8倍となったのです(18年度12月期は広告宣伝費などが要因となり最終損益が42億円の赤字)。また、利用者数で「メリカリ」と同じ利用者数1800万人を獲得しているのが「ヤフオク」です。この2社はインターネットを通じて中古品を売買できる事業を展開しています(「ヤフオク」はオークション中心)。

 

「なぜ女はメルカリに、男はヤフオクに惹かれるのか~アマゾンに勝つ!日本企業のすごいマーケティング」(田中道昭、牛窪恵著 光文社)では、同2社や「LINE」「オイシックス」など好調に推移している企業が、どんなマーケティング戦略で多くのユーザーを獲得しているのかを分析しています。
 著者の田中道昭立教大学ビジネススクール教授は企業戦略やマーケティング戦略が専門でアマゾン分析第一人者でもあることから、同社の最新情報についても分析。また、牛窪恵さんはトレンド評論家で多くのマーケティング関連の著作があります。

 
 

女性が安心するメリカリ

「メリカリ」はスマートフォンタブレットのアプリやパソコンで誰でも無料で利用できます。売買が成立するまでは本名や住所を「メリカリ」以外の第三者に明らかにする必要はありません。場合によっては価格を値切ることができるシステムです。売る側と買う側が直接行える商取引で、モノやサービス、場所などを多くの人と共有し交換できる「シェアリングエコノミー」といえます。
 2018年7月現在で最も多く取引された衣料ブランドは「ユニクロ」、高く売れた物は1粒315万円のダイヤモンド、多く「いいね」されたのは「どんぐり」で、「使いかけの限定コスメ」」なども今までの店頭ではない商品が売買されたりしました。
 
 一方、「ヤフオク」はオークションサイト中心のサイトで、「機動戦士ガンダム」のプラモデルや、「トミカ」の幻のミニカーなど、マニアックな商品が競売で売買されるサイトです。その点で「メリカリ」は価格を出品者と交渉したりでき、 「対話する、共感する」楽しさを伝える「メリカリ」に女性ユーザーが多く、 「価格を競う」刺激を提供する「ヤフオク」には男性ユーザーが多いのです。

カスタマースエクスペリエンスがカギに

有機野菜や無添加加工食品の宅配サービス「Oisix(以下オイシックス)」は、2000年に事業を開始。19年3月時点の売上高は640憶円となりました。同社のユニークな特徴は、毎週木曜日に、「オイシックス」側から「おすすめ」がネット上の買い物かごに入ることです。もちろん、その商品を買う、買わないを決めるのはユーザーで、期日までに必要ないと思ったら食材を抜けばいいシステムになっています。
 
 また、注目すべきは提供するのは食品だけでなく、顧客に喜んでもらえるような食べ方や提案や、わくわくする感動などの体験価値も提供しているということです。ここでカギになるのが、「カスタマー・エクスペリエンス」で、「オイシックス」ではユーザーが使っていて楽しい、心地いい、気が利いていると感じ、提供者が顧客と継続的で良好な関係を築いていくことを念頭に置いて展開しています。
 

 Comment( ブログ筆者) 

ユーザーが楽しいと感じる手法
 ここ20年ほどで日本の経済状況や産業構造は大きく変化しました。世界中での「GAFA」の台頭がすべてを物語っていますが、本書のサブタイトルにはその企業の一つ、「『アマゾン』に勝つ日本企業のすごいマーケティング」についての「アマゾン」についても書かれています。ですから、この本のテーマは正確には「アマゾン」に勝つほどの勢いのある企業とした方がよいでしょう。
 
 それほどに好調に推移している日本企業が本書には登場します。そして、「アマゾン」と同じマーケティング手法を展開しているという点で共通している企業の戦略も書かれています。「アマゾン」については、実際に「アマゾン」のプライム会員であるブログ筆者は、そのサービスの徹底ぶりに感心せざるを得ません。
 
 今年にプライム会員費が値上げされましたが、会員を辞めることは考えませんでした。やはり、どんな商品でも短時間で届けられ、かつ価格もリアル店舗より安いというのが魅力です。しかも本書でも触れていますが「『カスタマー・エクスペリエンス』」の追求を創業以来のビジネスモデルの中心に組み込んでいる」というのです。同社では、サイトを訪問したユーザーの動向を可視化分析し、ユーザーが楽しい、気が利く、好ましいと感じることを商品だけでなく、プライムビデオやプライムミュージックを通じてサービス化しています。
 

本書の著者である田中道昭先生は「アマゾン銀行が誕生する日」など「アマゾン」に関する著書も多く、今回に紹介した本の中でも「アマゾン」の今後の展開についても書いています。今、好調な企業の将来を知る上でも学べる好著といえます。

関連本

p:image -->

Book.「宇宙開発最前線の現場で働く実在の人物の姿を紹介『宇宙兄弟 リアル』」

f:id:musashimankun:20200411184244j:plain

宇宙兄弟 リアル」
(取材・文 岡田茂講談社

Over View
 漫画「宇宙兄弟」は漫画家の小山宙哉さんの作品で2007年から「モーニング」(講談社)で連載が開始。現在、コミックスは36巻までが発売されています。
 漫画では主人公の南波六太(なんばむった)と弟の日々人(ひびと)の二人が宇宙飛行士として活躍する姿を中心に、JAXA宇宙航空研究開発機構)やNASAアメリカ航空宇宙局)、ロスコスモス(ロシアの宇宙開発企業)で宇宙開発事業にかかわる人々との交流を交えながら、南波兄弟二人が日々、宇宙事業に対してさまざまな困難に遭遇し、葛藤しながらも成長していく姿が描かれています。

このほど発売された書籍「宇宙兄弟 リアル」(取材・文 岡田茂講談社)では、漫画「宇宙兄弟」で描かれた舞台となる宇宙開発最前線の現場で働く人たちについて取材し、具体的な仕事の内容、仕事観、生き方や仕事に関するエピソードも交えながらまとめています。
 金井宣茂さんや油井亀美也さんなどの宇宙飛行士の現在の仕事や、フライトディレクター、専属ドクター、宇宙飛行士ユニット長など、普段ではテレビやマスコミなどに出てこない人々の仕事、インタビューも紹介されていて、苦労話などもまとめられています。

 

日本の宇宙開発事業団の仕事に関わる人々の肉声が伝わってきますが、インタビューを受けている9人は、「仕事」をする上で大切なことを述べており、宇宙開発事業とは違った分野で働く人にとっても参考になる内容といえます。
 同書をまとめた岡田茂さんは映像ディレクター、ライターで、「宇宙がきみを待っている」(若田光一との共著、汐文社)や「情熱大陸 宇宙飛行士・若田光一」(MBS)などの作品があります。

 

訓練ではマイナス20度で生活

本書に登場する9人の中で2名を紹介します。
防衛医科大学校病院で外科医師・潜水医官として勤務していた金井宣茂さんは、2011年に11人目の日本人宇宙飛行士になりました。向井千秋さんや古川聡さんの医師から転身した3人目の宇宙飛行士です。2017年には168日間にわたるISS国際宇宙ステーション)の長期滞在ミッションに参加しました。
 
 またNASAの宇宙飛行士候補者訓練コースでは、一般サバイバル技術、飛行機操縦、スキューバ、語学、体力訓練があり、ISS国際宇宙ステーション)やソユーズなどの宇宙システム、宇宙実験に必要なサイエンス関連の基礎知識(生命科学、地球観測など)、航空宇宙工学に関する知識が求められたといいます。
 
 飛行操縦訓練では、飛行機のわずかな変化も見逃せず、緊急事態のケースで飛行機を操る訓練もします。緊急事態という点では、地球への帰還時にソユーズが不時着したケースに備えて、救援隊が到着するまでの3日間、宇宙船内に装備されたサバイバル道具を使って、マイナス20度の中で雪原で生き延びる訓練にも耐えました。
 

ほかに6日間、洞窟の中で過ごして探査したり、水深20メートルの海底の研究施設で10日間ほど作業する訓練もあります。宇宙業界はたくさんの業務を、夢と元気と根性で乗り越える、スポ根の世界だといいます。意外な点では訓練が辛い時は鼻歌を歌ったりしたという、エピソードも書かれているところが面白いです。

宇宙飛行士に大切なのは心

日本人初の飛行士に選ばれた毛利衛さん、向井千秋さん、土井隆雄さんの晴れの舞台の裏で、3人の訓練や実験計画をったのが、宇宙飛行士ユニット長の上垣内茂樹さんです。これまでに数多くの宇宙飛行士と仕事をともにし、さまざまな形で宇宙飛行士を支援してきました。その上垣さんが宇宙飛行士に求められるのは、技術面ではなく、仲間との協調性だといいます。
 
 宇宙飛行士が注目されるのは心・技・体がそろっているかです。知識や技術や体は、後で訓練でも磨いていけます。では、宇宙飛行士を選ぶ時に何を重要視するかですが。それは「心」だといいます。例えば、スタッフ同士の協調性では、どんな局面においても仲間と仲良く穏やかに、落ち着いた気持ちでミッションを遂行できる「心」を持っているかが重要になってくるのです。
 
 ある宇宙飛行士が精神的に追い詰められて、仲間の宇宙飛行士と喧嘩して口をきかなくなりました。地上管制官のいうことも聞かなくなったのです。結局、その人は宇宙ステーション全体に危機が及ぶということで帰還させられました。まず、どんな状況になってもチームワークを保っていける「心」があるかが重視されるのです。

インタビューでは宇宙飛行士になるための試験作りの裏話など、普段では聞けないエピソードも数多く盛り込まれています。
 

Comment ブログ筆者

何事にも負けずに耐えられる根性
 宇宙飛行士と聞くと、まず頭に浮かぶのが並大抵の人では就くことのない職業だということです。

実際に宇宙飛行士の資格を得る人にはパイロットや医者など知力、体力ともに秀でた人が多いですね。ただ宇宙開発に関わる人は全てが宇宙飛行士ではありません。実際に日本人の宇宙飛行士の誕生に尽力してきた上垣内茂樹さんは、宇宙を飛んだ経験はありません。
 
 このように本書では宇宙飛行士以外の人で宇宙開発に関わる人たちのインタビューが多く紹介されています。その中の一人である宇宙飛行士健康グループ主任医長(専属ドクター)の樋口勝嗣さんは、飛行士の試験に合格しなかった人ですが、その後、JAXAに入社することができました。専任フライトサージャンになると、宇宙飛行士の地球帰還に立ち会うため、24時間以上の勤務が続く場合もあるそうです。

仕事では樋口さんは何事にも負けずに耐えられる根気が必要だと話していますが、これは宇宙飛行士の金井宣茂さんが話していた内容と似ています。
 
 金井さんは、宇宙業界は「スポ根の世界と同じ」とも言っていますが、アスリートが最後に勝つか、負けるかはメンタル、精神面が決め手になるといわれます。このことは、宇宙飛行士に大切なのは「心」だという上垣内さんの話も共通しています。
 何事にも人間は究極的には「心」が重要になることが分かります。
 

また、本書では女性の宇宙飛行士マネージャーの中山美佳さんも登場します。9人の中で唯一、女性ですが、宇宙飛行士と身近に接する日常の仕事中の話が紹介されていて興味深く読むことができます。全員が仕事に対して何が重要になるかを述べていて、しかも、インタビュー形式なので、読者にとって分かりやすく読むことができます。

関連本

Book.「脳から無意識ニーズを探る『アップルのリンゴは なぜかじりかけなのか?~心をつかむニューロマーケティング~』」

f:id:musashimankun:20200412095025j:plain

「アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?」
(廣中直行著、光文社)

OverView
「アップルのリンゴは なぜかじりかけなのか?~心をつかむニューロマーケティング~」(廣中直行著、光文社新書)は、マーケティング共創協会研究主を務める著者が、「ニューロマーケティング」をテーマに、専門家と一般読者が読んで意味のある本を目指し書かれました。何よりも商品開発の鉄則は、人々が気づいていない「欲求」を呼び覚ますモノを提示することであり、そのためのより確実で効率的な戦略が「ニューロマーケティング」だとまとめています。

1970年代に心理学と経済学が結びついて「行動経済学」が生まれました。それに脳科学が加わり「ニューロエコノミクス(神経経済学)」分野ができ、この実験の過程で生まれたのがサブタイトルの「ニューロマーケティング」です。
分かりやすくいえば、従来のモニタリングなどの調査などにより消費者動向を調査するのではなく、脳科学の立場から消費者の脳の反応を計測し、深層心理や行動を把握しマーケティングに活用する方法です。
 
 

アップル復活に認知科学

メインタイトルからアップルについて書かれた本のイメージもありますが、本書では「ニューロマーケティング」の手法や、アップルの展開のほかにも多くの企業の成功事例やヒットを生み出す商品の法則がまとめられています。
 各章のテーマごとに、幼児向け人形開発者とテレビ番組プロデューサーの対談も掲載されていて、実際に現場で働く人たちが、世の中の動きや自分たちの仕事をどのように考え、商品開発や番組制作に活かしているのかが分かります。アップルの商品開発についても、各章のテーマごとに書かれ、読みやすい内容になっています。
   

業績不振が続いていたアップルにスティーブ・ジョブスが復帰したのは1997年です。マイクロソフトとの提携で地盤を固めたジョブズは以降、パソコン「iMac」、携帯音楽プレーヤー「iPod」、そしてスマートフォンiphone」を投入し、見事に業績を回復させました。ジョブズの経営手腕はもちろんですが、各製品のデザイナーも注目されました。しかし、アップル復活の要因はそれだけではなく、ドナルド・ドーマンという著名な認知科学者をフェローとして招聘したことにありました。会社の厳しい状況が続くなかで、「人間の本質とは何か」「人間のこころはどのように働くのか」について研究していたのです。
 
 マーケティングでは商品には「機能的価値」と「情緒的価値」があり、前者は客観的数値で表せる性能で自動車などの加速性能などが挙げられます。後者は商品が人の「こころ」に訴えるメリットを指します。消費者が商品を買うか買わないかは、好きか嫌いか、値段が高いか安いかを決めるのは「こころ」で、そのためには脳の働きを調べれば商品がどう思われるかは予測がつくということが特徴です。
 
 

サプライズでヒット商品

「情緒的価値」を高めるにはいくつか法則がありますが、2007年の新商品説明会の会場でアップルのジョブズは「iphone」について発表し会場に詰めかけた人々を「サプライズ」させました。説明会の過程でジョブズは「iPod」、携帯電話、ブラウザの各商品について話しながら、最後にこの3つを合体させた「iphone」を見せました。こうして誰もが予想できなかった商品は爆発的ヒットにつながったのです。
 
「サプライズ」とは少し違いますが、ある日、社員が腕時計を落とし壊してしまったことから、その社員が落としても壊れない商品を提案し開発されたのがカシオの「G-SHOCK」です。この商品は発売当初にアメリカで放送された「アイスパッカーの代わりに、『G-SHOCK』をたたく」というコマーシャルが、やらせではないことが証明され、消防士などで売れ始め火がついたといいます。本書にはこのように、「ニューロマーケティング」活用によっての成功の事例や法則が数多く挙げられています。
 

Comment(ブログ筆者)

 ●脳の働きと消費行動の関係
 まず、本書タイトルの「アップルのリンゴは なぜかじりかけなのか」を見た時に、すぐに読みたいと感じました。「iPod」「iphone」などアップルの商品は自分の生活には欠かせないものだからというのが理由で、この各商品についてはいつのまにか購入数も多くなり、長い付き合いになっています。
 
 やはり、タイトルのつけ方からも内容に期待できることが予測できたのですが、期待通り面白い内容でした。テーマである「ニューロマーケテイング」については、人の深層心理と消費行動について関係が深いことからも関心があり、その点で脳の働きがいかに影響しているかを再認識しました。考えてみたら、「アップルのリンゴは なぜかじりかけなのか」は、とても気になることですね。
 もちろん、読者を惹きつけるインパクトのあるタイトルだけでなく、本書にはこのリンゴのデザインが生まれたいきさつや、「かじりかけ」の意味も書かれています。
 
 日本は現在、少子高齢化でモノは市場にあふれ、いかに新市場を創出できるかが、ヒット商品を生むといわれています。そのような状況では各企業開発者の努力はすざましいものがあると思われますが、人の本能に訴求する「良い気分にさせる」「サプライズ、意外性」などがヒット商品につながることは、これからも変わらないような気がします。(今回に紹介させていただいた本は新刊ではありません。ご了承ください)

関連本