musashiman’s book review

一般の話題本や漫画を紹介しています。

Book.(Manga)「井上雄彦『リアル 15』障害や困難と対峙し、強く生きるとは」  

f:id:musashimankun:20201121174249j:plain

youngjump.jp

昨年4年半ぶりに再開した「リアル」

   井上雄彦 先生の漫画「リアル」が「週刊ヤングジャンプ」(集英社)2019年5月25日号から4年半ぶりに連載を再開。このほど11月19日に連載漫画の合計7号分に加筆修正されコミックス「第15巻」として発売されました。コミックスとしては6年振りの待望の最新刊の投入となりました。(第15巻の続きは「週刊ヤングジャンプ」12月3日号の51号で掲載」)

 

「リアル」は車椅子バスケットボールチームの「東京タイガース」に所属する戸川清春、バイク事故によってナンパした女性を半身不随にしてしまったプロバスケットボール選手を目指す野宮朋美、そしてトラックに轢かれ脊髄を損傷した車椅子バスケットボールチーム「調布ドリームス」の高橋久信を中心に描く物語で、1999年から「週刊ヤングジャンプ」で掲載がスタートし、2014年11月で休載となっていました。

 

  コミックス「第14巻」では高橋がプロレスラーのスコーピオン白鳥の闘いに感動し、高校時代にはバスケ部でキャプテンとして活躍していた本人が、失意を乗り越え車椅子バスケットボールを始めることを決意し「調布ドリームス」に入部。車椅子で前進し動き続ける猛特訓を始めます。

 一方、オオルリ杯で優勝した「東京タイガース」は「福岡ホークス」が出場を辞退したことにより、「ジャパンオープン」への繰り上げ出場を決めます。そんな状況の中で戸川は連絡の途絶えていた筋ジストロフィーの山内仁史から連絡を受け会いにいきます。

 

 最新巻「第15巻」では、「ジャパンオープン」で「調布ドリームス」と「ウォリアーズ」が対決。観戦にきていた高橋は偶然にも、高校時代のバスケ部の相棒でライバルでもあった野宮と再会します。

 その後、まだ試合に出場できない高橋は「調布ドリームス」の練習に参加しようとしますが、身体が高校時代のバスケットボール選手時代とは違い思うように動きません。以前にも増して高橋の葛藤が始まります。また、野宮は以前の喧嘩がもとで逮捕されてしまいます。

 

f:id:musashimankun:20201121174249j:plain

漫画の世界を超えた活動領域 

  井上先生は「リアル」のほかに高校バスケットボールを題材にした「SLAM DUNK」(ジャンプ・コミックス全31巻・集英社)(1憶4000万部以上を発行)や、原作「宮本武蔵」(吉川英治著)をもとに描いた「バカボンド」(モーングコミックス既巻37巻・講談社)を描いています。

 

 「SLAM DUNK」や「リアル」がきっかけで、実技も注目され選手や試合はもちろん、バスケッボールや車椅子バスケットボールの人気が高まったことは言うまでもありません。また「リアル」では車椅子バスケットボールの世界だけでなく、障害を負ってしまった人々の日常や心情も詳細に描かれています。

 

 井上先生はその作画から手塚治虫文化賞大賞やメディア芸術祭大賞など多くの賞を授賞しており、昨年5月23日から8月26日まではロンドンの大英博物館で「Manga」展にも作品を出展しています。展覧会では2008年~10年に「井上雄彦 最後のマンガ展」を東京・大阪・熊本で開催したほか、2014年には「ガウディ×井上雄彦-シンクロする創造の源泉-」を、2011年に真宗大谷派東本願寺の依頼により屏風「親鸞」を描いています。

 

困難や障害を乗り越え、強く生きるということ

 「リアル」について井上先生は「REAL 10thAnniversaryPV-KajiriVresion」(ユーチューブ)のインタビューで以下に述べています。

車椅子バスケットの選手というのは、ある意味で一度は死んで、それを乗り越えて今があります。障害とは何なのか、また皆も生きていく上では多くの壁がありますが、それをどう乗り越えていくのか。このテーマは、ほかの人も同じだと思う。試練を通して人の強さとは何か、強さそのものよりも、強くあるとはどういうことなのかを描こうとしています」

 

f:id:musashimankun:20201122024425j:plain

著者関連本

 

f:id:musashimankun:20201108170644j:plain

www.s-manga.net

f:id:musashimankun:20201108165311j:plain

 

morning.kodansha.co.jp