musashiman’s book review

2019年8月~19年11月までの一般の話題本や漫画紹介のほか、ブログ筆者による2020年3月発売の「海に沈む空のように」を紹介しています。

Book.発生6年前に悪性ウイルスの流行を予言 石弘之「感染症の世界史」

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悪性感染ウイルスの流行を予言
 昨年12月末に中国・武漢で発生した新型コロナウイルスは世界中に拡散し多くの感染者と死者を出しています。
 地震などの災害と同様に悪性ウイルスの流行にもサイクルがあるという元朝日新聞編集委員で環境ジャーナリストの石弘之さんは、この悪性ウイルスの発現を予言し、2年前に上梓した文庫版「感染症の世界史」(KADOKAWA)の中で警鐘を鳴らしています。

 

 「感染症の世界史」では「エボラ出血熱」や「デング熱」の発現や原因、「環境変化が招いた感染症」などを検証。「世界で増殖するインフルエンザ 過密に社会に適応したウイルス」では、インフルエンザウイルスがどのように発生してきたかを考証しています。

 

 同ウイルスはガン、カモ類、シギ、カモメや、牛、犬、猫、ネズミ、クジラなどの哺乳類から人に感染する可能性があるといいます。鳥インフルエンザウイルスが人に初めて感染したのは1997年で国際社会は衝撃を受けました。前年には中国・広東省でガチョウが鳥インフルエンザにかかり、感染したガチョウの4割が死亡していたのです。
 

 この鳥インフルエンザが変異を起こして「人から人」へ伝染した状態になれば、「感染爆発」のパンデミックとなり、500万人以上の死者が出る可能性があることをWHO(世界保健機構)は2005年9月に警告していることが書かれています。
 
 
ブログ筆者Comment
戦争では多くの兵士が感染症で死亡
 昨年12月末に中国の武漢で発生したこの悪性ウイルスは、ほんの数か月で世界中に拡散、アメリカやヨーロッパ諸国の首脳は、公の場で戦争状態と発言し、日本でも4月7日に緊急事態が発令され、外出抑制が発表されました。石さんは著書の中で、戦争ではコレラマラリアなどの感染症による兵士が多く死亡したことも述べています。
 
 新型コロナウイルスの発祥はコウモリといわれ、そのコウモリから感染した動物を人が食べたことが原因といわれています。12月末にはAI探知機が既に警告を発信していたともいわれますが、最初にこのウイルスを発見し、既に他界した武漢の医師以外に世界中で誰も気づく者はいませんでした。
 
 日本でもコロナウイルスが経済に与える状況は深刻さが増すばかりで、パブや居酒屋、飲食店をはじめとしたさまざまな業態では、営業時間の制限や営業自粛を強いられ、財務状況がひっ迫し経営困難な企業も出始めています。

 そして何よりも危惧されるのは患者の急激な増加にともなう医療崩壊であることは言うまでもありません。
 

 コロナウイルスを封じ込めるワクチンができるのは早くても2021年といわれており、少なくとも、人類はこれから少なくとも1年間は余談を許さない状況が続くことになります。

 対策は個人個人が健康維持、体力維持に努め、密集、密接、密封エリアを避ける行動以外に方法はありません。

 

 

www.kadokawa.co.jp

 

小説「海に沈む空のように」発売のお知らせ
このほど小説「海に沈む空のように」がアマゾンkindle版(電子書籍)として発売されました。現在、はてなブログで連載中の小説とはカラーの違う社会派系小説です。価格はアマゾン「読み放題サービス」契約者の方は0円。単体価格は税込み450円です。

Book.肉親を殺害され人生が暗転した男と、家族が辿った運命とは。小説「海に沈む空のように」

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誰もが長い人生では、苦悩と絶望の中で、自分が生きるか死ぬかの戦場にいると実感することがある。

 

2020年3月8日から小説「海に沈む空のように」がアマゾンkindle版(電子書籍)として発売されました。

 

ストーリー

 ある日、女性の翻訳家が何者かに殺害される事件が発生しました。やがて、警察の捜査で犯人が逮捕されますが、なぜ、彼女が殺害されらけらばならなかったのか不明のまま・・・・・。

 被害者の兄・志賀昭雄はそれまで大手企業で仕事をし、順風満帆に生活してきましたが、殺人事件が発生してからは人生の歯車が狂い始めます。妻や娘とは会話がなくなり、やがて仕事では北陸・福井県への転勤を命じられます。

 昭雄は福井の場所さえ知りませんでした。そして、何よりも昭雄を落胆させたのは、学生時代からプロを目指し活動してきたメンバーとのバンド活動を断念することでした。

 失望の中で福井で生活を始めた昭雄は、ある在京のジャーナリストを通じて、妹が殺害さればなければならなかった「事件の真相」を知ることになります。そして、殺人事件をきっかけに仕事も家庭も断崖絶壁に立たされた昭雄は、福井で出会った人々との交流を通じて、本当の自分自身に立ち戻ろうとします。

 実際に筆者の身近に起こった事件をテーマにしています(原稿脱稿は2019年3月)。突然の人生の危機に立たされた男と家族の、絶望と再生を描く。

 

家族の場が戦場に変わる時

なぜ、家族間で殺人事件が発生するのか、残された家族はどう生きていくのか

 長い期間にわたって経済状況が好転することなく、中間層がなくなり二極化が進む現在の日本では、勝ち組以外には決して住みやすい社会とはいえません。
 経済の悪化だけでなく、中国に端を発したコロナウイルスによる肺炎の世界的な流行や、東日本大震災以降に多発する地震や異常気象により多発する災害、通り魔や怨恨による猟奇的な殺人事件・・・悲惨な殺人事件は年を追うごとにその過激さに拍車をかけているようにも見えます。
 そして、人が最もくつろげる筈で生活に身近な家庭や家族を襲う悲劇。今も家族間による殺人事件はなくなることがありません。

エリート一家を襲う悲劇

 2019年12月16日東京地裁は、同6月に息子を殺害したとして自首し逮捕された元農林水産事務次官の熊沢英昭被告(76)の裁判員裁判で、熊沢被告に懲役6年の実刑判決を言い渡しました。この事件は大々的にニュースに取り上げられた衝撃的な出来事でしたので、記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。

 この事件はまさに相手を殺さなければ、自分が殺されるかも知れないという切羽詰まったものでした。長きにわたり引きこもってきた息子は、両親を相手に家庭内暴力をふるってきたのです。そして父親は自らの息子を殺害するという犯行に至りました。
しかも犠牲者は息子以外にも全く違った形で発生してしまいました。事件に絶望した熊沢被告の娘が縁談破断を理由に自殺してしまったのです。

 なぜ、エリート一家を悲劇が襲うのでしょうか。なぜ、光あるところに恐怖の闇が確実に存在するのでしょうか。そして毎日のように報道される父親や母親による幼い子供への虐待事件・・・・、なぜ、平気で人は自分の生んだ子供を傷つけ殺害することができるのでしょうか。

 このほど電子書籍として発売した小説「海に沈む空のように」は、家族の間に起こった悲劇と、残った家族が事件後にどう変化していくのかをテーマにした小説です。

 
 小説では家族間の悲劇だけでなく、原発問題やえん罪事件など日本の現代社会が抱える闇にもスポットをあてています。小説は福井と東京を中心に展開しますが、「越前ガニ」(2020年2月、NHK総合「プロフェッショナル」が越前ガニの漁師を特集) を名産とする海や山の自然が豊かな福井がなぜ、日本で一番に原発が多い原発銀座と呼ばれるまでに変貌してしまったのか。県民の安全を願いながら生活する態度を無視する横暴な行政の状況も織り交ぜながら、日本の原発問題にもスポットをあてています。世界的にみても大惨事となった福島原発事故の問題は何も解決していないのです。

 また脅威のウイルスによる致死率の高い病気や、突発的な事件だけでなく、地震や災害も多発する日本では、いつ平穏な暮らしが戦場と変化するか分かりません。一寸先が死、闇なのです。

小説「海に沈む空のように」はアマゾンkindle版(電子書籍)として発売。はてなブログで連載の小説とはカラーの違う社会派系小説です。価格はアマゾン「読み放題サービス」契約者の方は0円。単体価格は税込み450円です。

Book.高倉健が最後に愛した女性・小田貴高が二人で暮らした日々を綴る「高倉健 その愛」

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高倉健 その愛」
(小田貴月著、文藝春秋

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「日本刺客伝」「八甲田山」「幸せの黄色いハンカチ」「駅STATION」「南極物語」「夜叉」「ブラック・レイン」「あなたに褒められたくて」などの名作に主演し、主演男優賞など数多くの賞を受賞した映画俳優の高倉健さんが他界して5年が経過しました。
 高倉さんは1959 年に歌手で女優であった江利チエミさんと結婚しますが数年後に離婚、以降は俳優としての職業柄、あまりプライベートなことは公開してきませんでした。しかし、1996年に高倉さんは、当時フリーライターをしていた小田貴月(たか)さんと雑誌の取材を通じて出会い、小田さんに交際を申し込み一緒に暮らすことになります。結婚ではなく養女として高倉さんは小田さんを迎えました。

 
 

高倉健 その愛」(文藝春秋)は、高倉さんが亡くなる二年前に「僕は貴(高倉さんは、小田さんのことを、たかしと呼んでいました)よりも先に死ぬよ。多分・・・・。そしたら僕のこと書き残してね。僕のこと一番知っているの、貴だから」と言われた小田さんが、高倉さんからの宿題を果たすために、17年間の高倉さんと一緒に暮らした思い出を綴っています。
 出会って数か月が経過した頃、小田さんはイランに仕事で出張中に、高倉さんからの電話を受けます。
 「僕が大きな声を出してしまったこと反省しています。(中略)僕が大声を出したのは、貴が心配だったからです。もう二度とイランに行ってほしくありません。続きの話は日本でできますか」
 こう高倉さんはストレートに小田さんに気持ちを伝えたのです。
 

 

ストイックを心がけた高倉健

高倉健 その愛」には高倉さんの幼少期時代から俳優になるまで、作品や共演者、監督についてのことはもちろん、生活にかかわるプライベートなことが小田さんの筆で細かに綴られています。
 プライベートな食事では①生ものはできるだけ避ける。例外・卵かけご飯の生卵とフルーツ、②料理と飲み物は、常温または温かいもの。冷たいものはほぼ不要。例外・たまに食べるアイスクリーム、③魚類はなくてもかまわない、肉食第一主義。例外で外食の寿司。
 ④野菜類の好き嫌いはほぼなし、⑤炭水化物の好物は白米とパスタ、⑥一品ごとに食べ終えるまで急かさないこと、⑦アルコールは一切不要。
 
 高倉さんが長年、加熱調理した料理や、夏でも常温か温かい飲み物にこだわったのは、腸のバランスを保ち体調を維持するためで、それがプロの俳優としての最低限のルールと考えていたから・・・だそうです。
 たばこも40代で辞め酒は不要、しかも「ジムに通っていないと落ち着かない。(中略)。東映の撮影がピークの頃は、ビタミン注射を打ってもらって、ごまかしながら仕事をしていた。このままだといずれ身体がもたなくなるぞって、限界も感じながら。ジムで本格的に体作りを始めたのはそれから」
 

真冬に京都で滝行も遂行

 ストィックさは役柄のイメージだけでなく、私生活でも貫いていました。
 東映時代には月に一度は京都のお寺で滝行も受けていました。「真冬の水は痛い!冷たいんじゃないんだ。滝のそばにはなかなか近寄れない。(中略)。一番に気をつけなきゃいけないのは、呼吸。体って生理的な反応があるから、水の冷たさで、ふって息止めちゃうんだね。そうすると、みごとに失神する。大声で水に入っていくのは、呼吸を続けるためなんだよ。とにかく大声を出す。僕は、最初にそのお経を徹底的に教えていただいた」
 滝の体験談は小田さんに、たびたび語られました。
 本書を通じて「名優・高倉健」は自分をどう作り上げていたのか、演技ではないまっさらな「人間・高倉健」を知ることができます。
 

Commentブログ筆者
 高倉健さんの映画は劇場公開やDVD、テレビなどを通じて観てきました。フリーとして独立以降、高倉さんは自分の出演する映画を選んできました。映画を通して一貫しているのは、一人の孤独なストイックで忍耐強い男を演じてきたことです。「これが男の生き様」と、高倉さんを見て多くの男性が魅了され続けてきたのです。しかし、それは演技ではなかった。プライベートで素顔の高倉さんも、常にストイックさを心がけていたのです。
 
 高倉さんは読書家でもあり自分を鼓舞するために、本の中に線を引き、自分でもメモをとり繰り返して読み返してきたそうです。自分を鼓舞する言葉では、「疾風に勁草を知る(激しい風が吹いてはじめて、丈夫な草が見分けられる→苦難にあってはじめて、その人の節操の固さや意思の強さが分かる)・後漢書王覇伝」、「艱難汝を玉にす(苦労や困難に堪えてこそ立派な人間になれる)」「我慢と努力がなければ、大人の顔にならない。ただの年寄りになるだけ・剛一(高倉健の本名)」。
 
 

苦難に沈んでも耐えて修行

王陽明の「四耐四不(したいしふ)」の言葉を刻んだペンダントもあり、ことあるごとに首にかけていました。意味は「冷に耐え苦に耐え閑に耐え、激せず噪がず競わず従わず、以って大事を成すべし」です。
 
ブログ筆者が個人的に気になっていたのは、高倉さんが千日回峰行者の酒井雄哉大阿闍梨からいただいた言葉を大切にしていたことです。その言葉は「我が往く道は精進にして、忍びて終わり悔いなし」です。
 
 1970年当時、高倉さんは自宅を全焼する火事に見舞われました。この火事をきっかけに、当時は同居していた妻の江利チエミさんの義姉による横領事件が発覚。翌年に江利さんからの申し入れで高倉さんは、チエミ夫人と離婚するのです。それから12年後、チエミさんの45歳での訃報が高倉さんに届きました。
 
 高倉さんは取材を避け京都の比叡山に酒井大阿闍梨を訪ねます。
 やがて寺を去る時に、「南極物語」への出演依頼があることを酒井大阿闍梨に話した高倉さんは、先の「阿弥陀如来のお言葉=たとえどんな苦難にこの身を沈めても、さとりを求めて耐え忍び、修行に励み決して悔いることはない」をいただき、「南極物語」への出演を決めたのです。高倉健という俳優の、本当の姿を知ることのできる一冊です。

関連本

Book.ボクシングバンタム級WBA・IBF王者 井上尚弥の結果の出る思考術「勝ちスイッチ」

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「勝ちスイッチ」
井上尚弥著、秀和システム

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 11月7日、さいたまスーパーアリーナで世界最強を決めるワールド・ボクシング・スーパーシリーズWBSSバンタム級決勝が行われ、WBAIBF世界バンタム級王者の井上尚弥選手(大橋ジム)が、フィリピンの英雄マニー・パッキャオに次ぎ「伝説」といわれる5階級制覇王者のWBAスーパー王者のノニト・ドネア(フィリピン)を3-0の判定で下し優勝しました。
 
 WBSSとはボクシングの異なる団体の世界王者ら8人が争うトーナメントで、2017年の第1回目は賞金総額50憶円といわれ、スーパーミドル級で実施されました。第2回のWBSSバンタム級トーナメントは昨年10月にスタートし、井上選手は1回戦で元WBAスーパー王者のフアンカルロス・パヤノ選手(ドミニカ)を相手に1ラウンドでKO勝ち、2回戦目の元エマヌエル・ロドリゲス(プエリトルコ)にも2ラウンドTKOで勝利を収め、決勝へと進んだのです。

 

決勝は井上、ドネア両者の壮絶な打ち合いで、2ラウンドには井上が右目上をカット(後に眼底骨折と判明)しましたが、その後も怯まずに攻撃、両者が互角とも見える中で、11回に左をドネアのボディーに炸裂しダウンさせました。判定は一人が1点差としたものの、他二人は、5点と8点差の井上の勝利と採点していました。まさにモンスターの通り、怪物の力を証明したのです。
 「勝ちスイッチ」(井上尚弥著、秀和システム)は、天才、モンスターといわれる井上選手の、ボクシング論や家族、生き方についてまとめられたものです。

血のにじむ練習をしてきた

自分が天才と呼ばれることについて井上尚弥選手自身はどう思っているのでしょうか(本書よりブログ筆者が抜粋し作成しています)。
6歳で、町田協栄ジムに通っていた父・真吾の姿に憧れてボクシングを始めた。小学生の頃からスパーリング大会で上級生に勝ち、高校では7冠を獲得して、当時からプロボクサーたちとスパーリングしてきたが、当時から天才と呼ばれるほどのセンスがないことを自覚していた。父はメディアの取材で「天才ですね」とヨイショされると、「尚は血のにじむような練習をしてきたことを知らないのに、簡単に天才などという言葉を使わないでくださいよ」と冗談半分、本気半分にたしなめることがある。
 
 ボクシングはスポーツだが、ウエイト階級制であり選手たちはリミット内の体重で試合に出場します。スポーツとはいえ、拳で相手にダメージを与える危険な格闘技でもあるのです。絶食を何日も強いられた上に、リング上では大きな打撃を脳にも受けます。まさに「命をかける」スポーツと見る一般人は多いですが、井上選手は「リングに命はかけない」といいます。
 

100%の準備でできる自信

「命をかけるボクシング」は、僕が理想とするボクシングの対局に位置する。殴り合いにいくのだから、本能も感情も覚悟もある。しかし、求めるのはそういうボクシングではない。2本の腕だけで何ができて何を魅せられるのか。情熱や殺気、そして冷静さのバランスをとりながら、勝つためのデザインを描き、その作業を遂行していく。「打たさずに打つ」「パンチをもらわずに勝つ」究極の心技体の完成作品をそこに求めている。
 
 では、メンタル部分はどう管理しているのでしょうか。
 周りが見えなくなるパニック状態は、「負けたらどうしょう」「相手はどんなパンチを放ってくるのだろう」といった不安や恐怖、ネガティブ要素が原因で発生する。いかに「自然体でいられるか」が大切になってくる。
 父と拓真と共に小さい頃から練習などを通じて培ってきた性格なのかも知れないが、1番は100%の準備をして作り上げた自信だろう。
 

ボクシングで熱狂させたい

Commentブログ筆者
 著書「勝ちスイッチ」は井上尚弥選手のWBSS勝戦が行われた翌日には大々的に新聞広告が打たれました。NHK「プロフェッショナル」も12日には井上尚弥選手を特集、同週発売のボクシング専門誌はもちろん、ほかに多くのメディアが最速で井上尚弥選手を特集しています。メディアだけでなく多くのファンが今回の決勝戦で井上選手が有利と見ていたのでしょう。
 
 しかし、ブログ筆者は相手のドネア選手の状況をみた時に、もしかしたら井上選手は苦戦する可能性があることを直感したのです。それは、伝説とまで呼ばれるドネア選手の体格にありました。年齢36歳とはいえ、ドネア選手は今回のトーナメントにフェザー級から二階級下げての参戦だったからです。
 
 ブログ筆者の脳裏をよぎったのは、WBC世界バンタム級王者で後に同スーパーバンタム級王者、同フェザー級王者の3階級制覇を成し遂げた長谷川穂積選手の姿でした。長谷川選手はバンタム級王者時代に5年間王座に君臨し10度の防衛を果たした王者でした。このクラスでは無敵だったのです。
 その長谷川選手が階級を上げてフェザー級の王者になるまでには、バンタム級時代のように相手をKOで倒したように、簡単には勝利を掴むことができませんでした。少しのウエイトや体格の違いがボクシングの試合には大きく影響してくるのです。
 
人間離れしたパワーを証明
 井上選手とドネア選手との試合でも、ドネア選手はウエイトをバンタムに戻したとはいえ、井上にとっては初めての判定になりました。井上選手はそれまでの最強相手を早いラウンドで倒す試合ではなく、フルラウンドを闘いましたが、やはり、5階級を制覇したドネア選手の力があったことを証明しています。
 そして、常に強い選手と対戦して、ボクシングを通じてお客やファンを「熱狂」させたいと話す井上選手の、人間離れした並々ならぬパワーを証明した試合でもあったのです。

関連本

真っすぐに生きる。|書籍詳細|扶桑社

Book.(漫画)「裸一貫!つづ井さん」. ベストセラー「腐女子のつづ井さん」で新シリーズ

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「裸一貫!つづ井さん」
(つづ井著、文藝春秋

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 アラサーでおひとりさまで、オタク女子のつづ井さんがツィツターで書き続けたコミック・エッセイ「腐女子のつづ井さん」(KADOKAWA)シリーズは現在、3巻まで発売され累計発売部数が35万部のベストセラーとなりました。
 「腐女子」とは「ボーイズラブ」が好きな女性のことで、「腐女子のつづ井さん」さんには、つづ井さんの日常の生活が、絵日記風に読みやすく描かれています。仲間と公園に出かけて遊んだり、誕生会を開いたり、何か特別なことをやっているのではないのですが、とにかく、つづ井さんは「毎日を楽しんで」いるのです。

 


 デビュー作の「腐女子のつづ井さん」は「第20回文化庁メディア芸術祭」漫画部門審査委員会推薦作品にも選ばれました。好評につき2019年5月からは「CREA WEBコミックエッセイルーム」(文藝春秋)で新シリーズ「裸一貫!つづ井さん」(同)の連載がスタート。このほど「Ⅰ」巻が発売されました。
 基本的には「腐女子のつづ井さん」の流れを引き継いでいる作品で、登場人物も作者のつづ井さんと友人たちで構成されています。「休みの日は友人たちと集まってオタクしたり、公園で遊んだり、知育菓子を作ったり、架空の恋人を作ったり・・・、やりたい放題やっています」。
 そんな、つづ井さんも気がつけば20代後半、同級生の結婚や出産のラッシュが続くなかで、「特にな~んとも思っていません」。「年々、いろんなことが気にならなくなっていて、自分でもウケる ただただ毎日生きるのが楽しい~」。
 相変わらず、裸一貫のつづ井さんは、毎日、楽しいことを考え実行していくのです。

 
 

友人も皆、腐女子でオタク


 「裸一貫!つづ井さん」に登場する友人Mも橘も、ゾフ田も、オカザキさんもみんな腐女子でオタクです。「夜遊び」ではある日、お泊り会で深夜に4人は「夜の公園で遊ぶ」ことを考えます。やがてシーソーやブランコで遊びながら、近くに高校生のカップルがいることに気づきます。
 
 「ライフハック」では、つづ井さんが何かを世話したいと思います。そこで「自分の尻」を今まで何も気にしてこなかったことに気づきました。その日からお尻用の石鹸で洗うようになり、保湿も始めました。やがて、毎日、撫でまわしていくうちに、愛おしく感じるようになっていくのです。
 
 そして、「漠然とした寂しさとか、行き場のない庇護欲とかさ、今後そういうものに押しつぶされそうになる場面が来たとしても大丈夫って思った。私はこうやってアイデアと工夫で、乗り越えて生きていけるって自信になった」とオカザキさんに話すのです。
 
 「つくってあそぼ」では、「How to 一人で推し活」として、つづ井さんが「推している人」について、推してくれる架空の人を作ります。「その人の人生をイマジネーションの世界で追体験し、その人物の行動を自分のものにします」「SNSでアカウントを作り、その人物として呟き完了」となります。
 

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ツィッターから生まれるヒット作

Commentブログ筆者
 インターネットやスマホの拡大で通信販売での物の売買や支払いなど、さまざまに変化する私たちの生活ですが、音楽や絵、記事や小説、漫画、写真などの創作物でも同じことが言えるようになりました。音楽はパソコンがあれば一人でも作曲しアレンジができ、スマホでは写真を投稿したり、小説や漫画も描き投稿することができます。
 
 従来とは違う形という点では、出版物で話題になったのが、ツイッターへの投稿から拡散し話題となり、商品化されたりするケースです。
 小説では「ボクたちはみんな大人になれなかった」(燃え滓著、新潮社)、そして漫画では今回に紹介した「腐女子のつづ井さん」などが、ツィツターから話題になり書籍化されました。
 今年に入ってからは、累計20万超のリツイートになった「お金持ちになるゲーム」も同タイトルの書籍(小説 昆布山葵著、KADOKAWA)として発売されています。
 
 SNSを通じて誰もが創作したり情報を発信できる時代になって久しいですが、現在もツィッターには多くのユーザーが、自分の行動記録や日記、漫画や創作物、宣伝などを投稿し続けています。生活がスマホ中心に移行し、しかもツィツターは短い文章で完結するから忙しい毎日を送る人には、書きやすく読みやすいSNSの一つです。
 

自分が幸せで生きるのが楽しい

ツイッターで描かれた「腐女子のつづ井さん」も、シンプルで分かりやすい絵日記風のコマ送りです。全部が実際にあった話という点も多くの共感を得ているのではないでしょうか。しかも、「腐女子」という点は少し違うかも知れませんが、普通の一般女性が、自分の生活を楽しくするために、友人たちと工夫しながら楽しみを作っていく。毎日、生きるのが楽しいと思えたことを絵日記として描いていく。
 「自分で自分を幸せにするために、生活を工夫している」ことが多くの読者に支持されている理由だと感じます。

関連本

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Book.「銀行ゼロ時代」既存銀行は店舗も人も消滅、GAFAや新規企業参入で変わる勢力地図

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「銀行ゼロ時代」
(高橋克英著、朝日新聞出版)

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 私たちの生活や企業経営で欠かせない銀行業界は現在人口減少と超低金利に加え、キャッシュレス化、フィンテック(ITを駆使した金融サ―ビス)などのデジタル化が進む一方で、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)をはじめとしたデジタル・プラットフォーマーの金融界への進出により激動の中にあります。
 この状況は働く人が消え、店舗が消え、銀行そのものが消える可能性があり「銀行ゼロ時代」(高橋克英著、朝日新聞出版)が到来しかねないと警鐘を鳴らしています。

 


 全国銀行協会の調べでは銀行の本業である貸出金利息収入は、メガバンク地方銀行など全国115行合計で、2015年度が5兆1655億円が18年度が4兆5020億円に減少。貸出金利回りに有価証券利回りなどを勘案した資金運用利回りから資金調達原価を引いた「総資金利ざや」に至っては、09年度の0.25%から18年度には0.11%にまで減少しており、10億円の貸出を1年継続すれば250万円の利益があったものが、現在では110万円の利益にしかなりません。銀行が得る利益自体が半減しているのです。一方で目立つのがGAFAソフトバンク楽天、LINEなどに代表される企業の銀行業務への参入です。
 
 本書では大きな岐路に立つ日本の銀行の生き残り策、新規企業の金融事業を考証。著者の高橋克英さんは、三菱銀行シティグループ証券シティバンクなどで主に銀行クレジットアナリスト、資産運用アドバイザーとして尽力後に、金融コンサルタント会社を設立し執筆、講演など広範囲に活躍しています。
 

スマホで取引 AIレンディング

銀行員による対面での貸出業務が苦戦する一方で、デジタル技術の進展で業務はどう変わろうとしているのでしょうか。例えば、AIを活用した事業では法人向け貸出で決済や財務情報をリアルタイムで把握するクラウド会計のデータを、個人向け貸出では年収や勤続年数などの個人情報をAIで分析し、貸出金利や期間など融資条件を設定する「AIレンディング」(オンライン融資)があります。
 
 オリックス子会社の弥生は子会社でIT企業のアルトアを通じて、弥生の持つ会計ビッグデータオリックスの持つ与信ノウハウを活用し、オンライン上で短期間で審査を行い、自社ソフトを利用する中小企業向けに貸出を行っています。
 
 また、新規参入企業では楽天リクルートが、日々の決済や口コミなどのデータから信用力を判断し、銀行を介さずに貸出事業に参入。米国・アマゾンでは、2011年から同社に出品する企業への売掛債権の範囲内で融資を始めており、日本でも同制度を導入し、貸出を拡大しつつあります。
 「AIレンディング」は、審査などのスピードの早さや、スマホで手続きが完結する便利さ、そして、銀行の当該ローンよりも金利が低い点などメリットも多いのです。
  
 

若者のメガバンク離れへの対応

一方で新銀行の設立では、LINEが2020年にみずほとの共同でネット銀行「LINE銀行」を設立予定。出資比率は、LINE Financialが51%、みずほ銀行が49%で「スマホベースの次世代型銀行」の展開を目指すとしています。みずほがLINEとの銀行の共同設立に踏み切ったのは、若者層の既存銀行離れへの対応もあるようです。現在、若者層のメガバンク(三菱UFG銀行、三井住友銀行みずほ銀行)を始めとする銀行離れは著しく、個人の普通預金口座開設件数は、メガバンク合計よりも、住信SBIネット銀行楽天銀行イオン銀行などネット銀行が多いといわれています。これらネット銀行 9行の預金残高は21兆4069億円、口座数は3005万(19年3月末)に達しています。
 

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信用金庫、JAバンクは生き残る

スマホやネット取引の進展、コンビニATMがある中で、今後はどんな銀行が残っていけるのでしょうか。信用金庫、JAバンク、ゆうちょ銀行などは生き残る可能性が高いと予想しています。信用金庫やJAバンクは地域密着で築きあげてきた地元政治家や自治体などとの関係は地銀以上に強く、信金業界の中央銀行である「信金中央金庫」と、利益代表機関の「全国信用金庫協会」の存在も大きいのです。会員同士の相互扶助と地域貢献を掲げる協同組織金融機関であることも組織的に強固だといえるでしょう。
 
では既存銀行が生き残るにはどうすればいいのでしょうか。
 個人金融資産の増加や公的年金制度への不安、相続ニーズの増大で、今後も個人向け資産運用ビジネスは拡大することが予想されることから、富裕層向けや資産形成層向けの資産運用や、高齢者を対象としたサービスなどが挙げられるとしています。
 また、東京都内で千代田区中央区、港区、渋谷区などは今後も人口が増加すると予想されていることから、都内を拠点に事業を強化することなども提案しています。

関連本

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Book.(漫画)元柔道部の小林まことが描くオリンピック柔道金メダリスト 恵本裕子自伝「女子柔道物語⑦」

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「JJM女子柔道部物語」
(原作・恵本裕子、脚色、構成、作画・小林まこと 講談社

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  今回に紹介するのは「JJM女子柔道部物語」(原作・恵本裕子、脚色、構成、作画・小林まこと講談社)です。このほど「第7巻」が発売されました。原作の恵本裕子さんは1996年のアトランタオリンピック柔道女子61㎏級の金メダリストです。漫画では彼女の自伝を高校時代の柔道部時代から描いています。
 恵本さんは北海道旭川市内のカムイ南高校柔道部の神楽えもとして登場。たった入部5日めで高体連柔道大会旭川支部の新人戦で、61㎏以下に出場し、柔道歴6年目の黒帯の選手相手に苦戦を強いられながらも、逆転勝ちで優勝します。しかし、神楽は全国高等学校柔道選手権全道大会で強敵の三好千歌相手に戦い、右ひじを脱臼し完全敗退となってしまいます。

その後の高校総体北海道大会でも、マスコミに全く注目されていなかったカムイ南の女子柔道部員は健闘します。意外なことに大会では個人戦48キロ級以下では二瓶幸子、52キロ級以下では井堀礼子らが相手選手に勝ち続けます。
 61キロ級以下2回戦では神楽が網走東高校の水町郁代相手に、巴投げで勝ち、72キロ以下ではエースの藤堂美穂も勝利するのです。これでカムイ南高校2年生女子5人は、全員が初戦を突破するのです。
 ノーマークのカムイ南高校女子柔道部でしたが、以降も勝ち続け準決勝のベスト4に進みます。準決勝では何と二瓶が、それまで快進撃を続けていた札幌陽光高校の中川翔音を抑え込み勝利するという大金星をあげます。
 そして、「第7巻」では61キロ以下で神楽が高校総体北海道大会の様子が描かれます。この大会で神楽は、高等学校柔道選手権全道大会で右ひじ脱臼で棄権敗退となった相手の三好千歌とのリベンジマッチに挑みます。

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意外にも健闘するカムイ南女子

高校総体北海道大会 女子体重別61キログラム以下級準決勝は、三度笠高校3年生の三好と、カムイ南高校2年の神楽が熱戦を繰り広げます。神楽は三好の内股を押しつぶし場外へ、試合を攻勢に進めます。
 両者、引かないまま攻めては守りの試合が続きます。やがて、神楽が巴投げから三好を抑え込み、優勢のまま大外がりを仕掛けます・・・・。カムイ南高校女子柔道部は、神楽が入部したことで、熱気に包まれるようになるのです。
 
 実際に恵本選手が当時、どんな心情でいたのか、さまざまなエピソードも随所に盛り込まれています。例えば、試合が終わった帰宅途中にバスの中で、監督の花井先生が試合に出場した部員全員に、勝っても負けても褒めてくれたことがうれしかったことや、試合では強かった神楽も、早朝のランニングだけは部を辞めたいと思うほど嫌だったことなどが描かれています。
 もちろん男子柔道部員の様子も描かれていますが、第7巻では、ベオグラード世界選手権で銀メダル、バルセロナ世界選手権で金メダルを獲得した越乃忠則選手も登場します。

原作者が柔道の金メダリスト

Commentブログ筆者
 「1・2の三四郎」や「WhatsMichael」などの代表作がある漫画家の小林まこと先生は、2014 年に引退を表明しました。しかしある日、SNSで恵本さんが小林先生の「柔道部物語」(講談社)を高校時代に読んでいたことを知り、しかも恵本さんが近所に住んでいたことから会うようになりました。当時はミュージシャンとして活動することが増えていた小林先生ですが、恵本さんの話が面白かったことから現役復帰して、自伝を描き始めることを決意します。
 
 「JJM女子柔道部物語」の脚色・構成・作画を担当している小林先生は高校時代に柔道経験者であったことから、漫画家としてデビューして以降も「「1・2の三四郎」「柔道部物語」など多くの柔道や格闘技漫画を描いています。
 また、「WhatsMichael」にもみられるように、どの作品にも魅力的で面白いストーリーが進む中で、ちょっとしたユーモアで笑いを誘う表情やコマがあって読み手を飽きさせない漫画家です。そのユーモアは脚色することで「JJM女子柔道部物語」でも随所に描かれています。

原作者指導でリアルな柔道の作画

激しく厳しい柔道部の世界も、部員たちの姿もどこか、辛さを感じさせないのは、小林先生の作画も大きく影響していることは言うまでもありません。しかし、原作者が柔道金メダリストで、実際に投げなどの指導も受けている小林先生の作画は、リアルの一言に尽きます。  
 
 漫画では神楽(恵本選手)がなぜ、アトランタオリンピックで初めて日本人として金メダルを獲得できたのか、十分なプロセスも描かれるようですが、まだ、物語は始まったばかりの高校生時代です。
 今後に神楽もえが、どう柔道家として成長し金メダリストになるのか楽しみですが、実業団に入ってからの神楽の様子も描かれる予定だそうです。柔道の漫画で実業団の世界を描いているものは少ないので、この辺もいろいろ一般読者が知らない漫画を読めそうです。

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