musashiman’s book review

一般の話題本や漫画を紹介しています。

Book.「Yahoo!ビッグデータで分かった日本の新事実『ビッグデータ探偵団』」

f:id:musashimankun:20200411180054j:plain

ビッグデータ探偵団」
安宅和人、池宮伸次、Yahoo!ビッグデータレポートチーム)

Over view  ビッグデータという言葉を知っている人は多いと思います。でも、このデータがどのような方法で活用され、何が分かるのかを知っている人は少ないではないでしょうか。「ビッグデータ探偵団」(安宅和人、池宮伸次、Yahoo!ビッグデータレポートチーム著 講談社)は、ビッグデータがこれからのビジネスを考える上で、また、私たちの生活をより快適なものにするために役立つのかを、ヤフーの「マルチビッグデータ」をもとにレポートしています。 
 
 ヤフーがこれまで展開してきたサービスは検索や地図、ニュース、ショッピングなどサービスは100種類に及びますが、ビッグデータレポートの第一弾になったのが選挙予測です。2013年の参議院選挙の議員獲得数では的中率96%という高い数値となりました。
 以降、「景気判断」、「妊娠、出産を控えた女性の悩みを解決するもの」「熊本地震のデータから作成した災害対策を目的とするもの」「都道府県別の交通利便性の把握の未来の混雑情報の予測を目指すもの」「日本音楽の歌詞の特徴」など公開してきたレポートは多岐に渡っています。
 

本書ではビッグデータが本来の価値を発揮するためには、生身の人間の力が不可欠だとしながら、ビッグデータはコンピュータやAIの活用なしには作成できないが、あくまで最終的に必要となるのは、生身の人間の感じる力や決める力、そして伝える力だと強調。データを分析し、意思決定に役立てていく「データ・ドリブン」の思考力、分析力、情報科学の基本、データの力を解き放つ力を会得し、応用できる人がこれからの社会を生き抜いていけるとしています。
 著者の安宅和人さんは慶応義塾大学環境情報学部教授、ヤフーCSO(最高サステナビリティ責任者)でYahoo!ビッグデータレポート統轄、池宮伸次さんはYahoo!ビッグデータレポート編集長を務めています。Yahoo!データやオールカラーの図版をふんだんに使用し、タイトル付けなども工夫されていますので、とても読みやすい内容となっています。

 

役立つビッグデータ

「第1部ビッグデータは深層を描き出す」では「新社会人の心情」「育児をする女性の悩み」「頭が痛い日本人が多い時刻」などを検索データをもとに公開。「育児をする女性の悩みや思い」などについて分析した「ママは、生後102日目にわが子をモデルへ応募したくなる」では、女性が子供を出産したあとで、夫へのイライラが最も気になるのは生後45日目頃、子供の指しゃぶりが気になるのは生後56日目頃、そして、ママがわが子をモデルへ応募したくなるのが102日目頃だと分析しています。これら育児に関する悩みやニーズをカテゴリごとに分類したのが「育児キーワード群のカテゴリーツリーマップ」です。

育児キーワード群のカテゴリーマップ(資料 Yahoo!検索)


 
 「第2部 ビッグデータはこんなに役立つ」では、「これからの交通混雑ぶりがわかる」「救援活動をスムーズに進める、隠れ避難所を探せ!」「今の景気を予測することは、どこまで可能か?」などで構成。「救援活動をスムーズに進める、隠れ避難所を探せ!」では、2016年4月に発生した熊本地震で誰がどこに避難しているのかが分からず、救援物資を受けられないという混乱が生じたという課題に対して、ヤフーの「位置情報」データを活用し問題解決に取り組んだことを、豊富なデータをもとに説明しています。
 

Comment ブログ筆者

ユーザーの買い物データを企業がマーケティングに活用しているという話はよく聞きますが、気象情報や世の中の出来事(ニュース)、自分が関心のある物事や場所、ショッピングについて、日ごろからインターネット上で検索して確認することがあたり前になった現在、これら多くの情報がどのように作成されアップされているかを理解できる人は、一般ネットユーザーでもそう多くはないと思います。ネット関連の仕事に就いている人か専門家でなければ、なかなかそこまでは分かりません(他の業種でも同じことが言えます)。
 

話題のビッグデータがどのように活用されているかも同じです。AIの登場でビッグデータがさまざまに活用されているとは聞きますが、さて具体的にどう分析されネットでデータとして活用されているか、その裏側を知る人は少ないのではないでしょうか。
 
災害などの緊急事態にも貴重な情報提供
 本書では検索エンジン大手のYahoo!ビッグデータ活用事例と作成過程を、作成に関わる人々のエピソードも交えながらレポートしています。作成には時間のかかるものも多いですが、ユーザーが一瞬にして、状況を把握できるというのが魅力です。
 

やはり、災害などの緊急事態での活用が注目されますが、16年に発生した熊野地震で「隠れ避難民」がどこにいるかを確認できたことの功績は大きいですね。今年に発生した台風15号では被害を受けた千葉県で停電が発生したため、せっかく届けられた救援物資が、住人に届けられなかったようですが、停電さえ長引かなければ、この問題も解決できたのではないかと思います。
 生活に身近な情報から、政治経済、文化まで多くの情報をもとにアップされるビッグデータの見方が分かる一冊です。

関連本