musashiman’s book review

一般の話題本や漫画を紹介しています。

Book.毎日の健康や病気の理由が分かる体内細胞の日常を描く漫画「働く細胞BLACK(4)」

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「働く細胞BLACK」
(原作・原田重光、漫画・初喜屋一生、監修・清水茜 講談社

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 人間の体内には約60兆個の細胞が働いているといわれます。その中の赤血球や白血球などの働きを中心に擬人化した漫画が「働く細胞BLACK」(原作・原田重光、漫画・初喜屋一生、監修・清水葵 講談社)です。
 「第4巻」では「膵臓」や「帯状疱疹」「痔ろう」「血管」などをテーマに展開。「膵臓」をテーマにした「膵臓インスリン、決壊」では、糖尿病の人物の体内の様子が描かれています。糖尿病は糖分を助けるインスリン(ホルモン)の量が減ったり、正常に働かなくなると血中の糖分が高くなり、さまざまな弊害を発生させる病気です。

 

 赤血球は酵素と一緒に栄養素も運ぼうとしますが、インスリンの量が足りなくなると吸収できなくなります。そうなると、腎臓で血液をろ過する糸球体は、体内で糖分の量が増えすぎ、血液をろ過できなくなってしまうのです。糖分は腎臓でろ過された後も体内で吸収されずに排出されてしまう尿糖が出てしまいます。
 そこで赤血球たちは、インスリンを分泌する内分泌系のβ細胞のいるランゲルハンス島を訪れます。しかし、インスリンは糖尿病で血糖値が上がり、インスリンの必要性が増すと、β細胞の仕事が忙しくなりやがて疲弊してしまい、インスリンを生産しない状況になってしまったのです。一方でそんな状況になっていることに気づかない主人は、アルコールを飲みたばこを吸い続けます。体内で働く細胞たちの職場は、ますますブラック化するばかりなのです。
 

ウイルスとの攻防を描く

帯状疱疹」では、帯状疱疹ウイルスとの体内の攻防が描かれています。帯状疱疹は、体の中に潜むヘルヘルペスウイルスの一種である水痘・帯状疱疹ウイルスによって起きます。ピリピリ刺すような痛みと赤い斑点が体に帯状に現れます。このウイルスと闘うのがガン細胞などを始末するキラーT細胞です。キラーT細胞はヘルパーT細胞の命令により動きます。
 しかし、帯状疱疹ウイルスの攻撃を防ぐことはできません。帯状疱疹ウイルスの痛みは激しく、疱とが体を一周したら死ぬともいわれるほど危険なウイルスです。容赦ない攻撃に必死で白血球も反撃します。絶体絶命の危機に、突然にウイルスたちが攻撃をやめます。体外から薬物のアシクロビルが投与されたのです。この薬は水痘や帯状疱疹ウイルスに有効性を持つもので、ウイルス自体のDNAに入り込み、その増殖を防ぐ力があったのです。ヘルパーT細胞の働く様子は随所に描かれていますが、「第3巻」では尿道から細菌が逆流することで起こる急性腎盂腎炎でも細菌の侵入を防ぐべく、白血球たちに指令を出し続ける様子が描かれています。
 

Commentブログ筆者

 改めて自分の体内を省みて細胞たちに感謝
 普通に健康体で生活していると、身体の中で細胞がどのように働いているかに気を遣うことを忘れてしまいます。どこか調子が悪くなって初めて、自分の内臓が疲れていることに気づいたりするのです。「働く細胞BLACK」は、そんな生活を過ごしているブログ筆者には新鮮な漫画でした。
 
 医療業界やそこで働く人間たちの姿を描いた作品は多いですが、人間の体内の細胞や、病気をテーマにした漫画作品はそう多くはないと思います。監修者の清水葵さんの漫画「働く細胞」がベースとなっていますが、読者ターゲットを上げて描かれています。何よりも楽しみながら人体や体内の様子を勉強できるという点がいいですね。
 
 当初、タイトルの「BLACK」の意味が分からずに手塚治虫先生の名作「ブラックジャック」を連想したりしましたが、細胞たちが働く人間の体内の現場が、今でいう「ブラック」だという点に気づいた時はすぐに納得できました。
 
 常々、腸の健康こそが大事だと主張しているのは藤田紘一郎先生ですが、我々は脳の自我に翻弄されるままに暴飲暴食を続ける結果、必死に体内で細菌たちと攻防を続けている細胞たちにとって、日ごろの人間の生活や食生活は褒められるものではないのです。ここまで細部に至り体内での細胞の活動や、病気発生に至る経緯を知ると、少しは食生活も自嘲しなくてはいけない、体内の細胞たちに感謝しなければいけないと改めて思わされる作品です。