Book(Fairy tale).新版「ムーミン全集4『ムーミン谷の夏まつり』」挿画も多く読みやすくなって再登場
(トーベ・ヤンソン著、下村隆一訳 講談社)
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新版「ムーミン全集4『ムーミン谷の夏まつり』」(トーベ・ヤンスン著、下村隆一訳 講談社)は、日本語出版55周年記念の新版全集第4弾です。
6月のある日、ムーミン一家が住むムーミン谷に洪水が襲います。幸いしたのはムーミン屋敷が、しっかりした家で倒れなったのです。みんなは2階へ上がり嵐が過ぎるのを待ちます。翌朝、ムーミン一家のみんなは目をさまして、外を見るためにムーミン屋敷の窓際へかけつけました。
外の様子はすっかり変わっています。橋も川もありません。わずかにたきぎ小屋の屋根が、うずまく水の中から頭を出していただけだったのです。ムーミンたちの台所は水に埋まってしまいました。コンロや流し台、ごみ入れが水底にぼんやりと見えます。椅子やテーブルは天井の下に浮いています。ムーミントロールは大きく息を吸い込んで台所にもぐり、缶コーヒーなどを運びます。やがて、ムーミン屋敷の近くに家が流れてきます。ムーミン一家は流れてきた家の探索を始めます。
ある日、ムーミントロールとスノークのおじょうさんは、木々の枝に上ったまま取り残されたままになりました。寒気をスノークのおじょうさんは感じ、ムーミントロールに助けてほしいと懇願します。ムーミントロールは枝の上に立ち上がると、木の枝に吊り下げておいたバスケットを手に取ります。
中のサンドイッチの包みには、ママから「おはよう」とかのメッセージが書いてありました。パパからはロブスターの缶詰も入っていました。これを見ながら、ムーミントロールは両親の優しさに触れ、こんなことはたいしたことないぞと、急に力がわいてきたのです。
「もう泣くのはやめて、サンドイッチを食べなよ。この森の中を水を伝って進んでいこう」とスノークのおじょうさんに言います。
74年前に誕生したムーミンは今も大人気
「ムーミン」と聞いて知らないという人は、ほとんどいないのではないでしょうか。著者のトーベ・ヤンソンさんが初めて童話として書いたのが1945年といいますから、実に74年前にスタートしたということになります。
日本でも童話、絵本、DVD、TVアニメ放送からキャラクター商品、ムーミンツアー、ムーミンアプリまで、今も多くの商品がラインナップされていますが、8月16日の「ムーミンの日」には、ムーミンバレーパーク(埼玉県飯能市宮沢湖畔)でイベントも開催され、多くのゲストが集まりました(htpps://www.moomin.co.jp)。
いかにムーミン人気が凄いかが分かりますが、今年はフィンランドと日本の外交樹立100周年を記念して6月16日まで、 東京の森アーツセンターで原画を展示した「ムーミン展」も開催されたほか、9月1日までは大分県立美術館でも開催されています。また、NHK(BS)ではアニメ「ムーミン谷のなかまたち」も放送。現在シーズン1までが終了しています。
自分たちで困難を乗り越えていくムーミンたち
童話では講談社から全集の新版を発売。現在、全集1「ムーミン谷の彗星」に続いて全集2「たのしいムーミン一家」、全集3「ムーミンパパの思い出」、全集4「ムーミン谷の夏まつり」がラインナップされています。挿画もふんだに使われていますので、読みやすい内容になっています。
ムーミン一家の住む所では自然が豊かな島での冒険の様子や遊んだり休んだりする状況が描かれていますが、これはトーベ・ヤンソンさんがフィンランドの島で休みながら書いたものだと言われていますが、ムーミンが生まれた背景には、フィンランドの自然環境が影響されています。(今後は核廃棄物最終処理施設の運用が懸念されます)冬は長く、その分、夏への想いが強くなる人が多く、トーベ・ヤンソンさんも夏休みには3~4か月を島で過ごしながら、「ムーミン」を書き続けたといわれています。
また、「4巻」でも洪水がムーミン一家を襲うストーリーや、スノークのおじょうさんとムーミントロールが森の中で迷子になってしまいます。
時には彗星を旅したり不思議なムーミン一家ですが、全集の各巻の中では、どんな困難な状況に遭遇してもムーミントロールをはじめとしたムーミン一家の「自分たちで困難を乗り越えていく力強い姿」も描かれています。ファンタジーの世界も現実の世界でも状況は変わりませんね。
なお、全集は2020年に全集5巻から9巻までが発売予定です。
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